衣装ケース1つ分の想い ~手放すものと遺して逝くもの~

最近、「手放す」というキーワードに触れる機会が多くなったように思います。

仕事柄かもしれませんね。

先日もがん告知を受けた男性の患者さんと「手放す」ことについてお話しました。

自分の「物」を手放せない。

断捨離して終活しなければいけないことは分かっているけれど、1つ1つ思い入れも

あって、捨てることができない。

そうお話してくださいました。

物に対する執着心は人それぞれですが、命の終わりを見据えた「物」の手放しは

そこに多くの想い出や想いが含まれている分、そう簡単にはいきません。

また、大切な人の遺品も同様です。大切な人の息づかいやぬくもりがまだそこに感じられ、とても手放すことなどできません。

私はそんな時、

今は無理でも、少しづつ整理出来るようになりますよ、とお話します。

気持ちの落ち着きと、「死」への受け入れが少しずつ出来るようになれば、手放すことも徐々に出来るようになっていきます。

そして、

衣装ケース1つに納めるようにしてみましょうか。

と提案します。

どうしても手放せないものもあります。

どうしても大切にしたい想い出もあります。

ですから、

衣装ケース1つ分なら、遺して逝く方も遺された人も負担なく置いておけるのでは

ないかと思うからです。

衣装ケース1つ分の想い。

人が抱えて生きるのに、ちょうどいい大きさなのではないか、

そう思います。