「悲しみには2種類ある」と言ったのはアメリカの小説家パール・バックです。
彼女は、生活によって和らげられ癒やされる悲しみと
和らげることができない悲しみの根本的に異なる2つの悲しみがあると語っています。
まさに苦難における悲しみとは後者の「和らげることができない悲しみ」です。
大切な人を喪った悲しみ、「死」や「病気」を前に人生の意味や生きがいを失う悲しみ、
それらは簡単に癒やされることはなく、深い深いところで根付き生活が悲しみに染まってしまいます。
悲しみを伴う生活に生きること、つまり生きることが悲しみになるのです。
それほどの深い悲しみに打ち砕かれた心は世界まで変えてしまいます。
雨の音も、まぶしい光も、頬に触れる風も、街を染める夕日も、稲穂の揺れも、
道ばたの小さな命も、世界のすべてが悲しみの色に染められます。
そして、いずれその悲しみが心の深くに置かれる日が来ても、それは決して忘れられることはなく
その悲しみの上に積み重ねられる生活があるだけで、なにかの琴線に触れればいとも簡単にその悲しみは
心の深くから湧き上がってくるのです。
悲しみと共に生きること、悲しみと共に人生を歩むこと、
苦難を経験した人は、心に深く刻まれた悲しみと共に生きています。